2018/12/04

建築×写真 - ここのみに在る光 / 九龍城砦 - 宮本隆司

東京都写真美術館で開催されている「建築×写真 - ここのみに在る光」に先日行ってきました。もともと建築を学んでいて、写真をはじめたきっかけも建築写真だったので、建築の写真の展示があると、気になって見に行きます。

この展示はこの美術館のコレクションの中で、建築を題材にしたものを並べたものなので、写真家、時代、国、被写体、アプローチも様々でした。とても固い印象の所謂「建築写真」的なものから、建物をイメージとして捉えたものもありましたが、私が意外にも心をつかまれたのは、ドキュメンタリー調の作品でした。

宮本隆司(みやもとりゅうじ)氏の九龍城砦(くーろんじょうさい)を撮った作品群です。九龍城砦とは、1950年代から(現在の)香港に形成されていた巨大なスラム街。どの国の法も及ばない、無法地帯と言われていた場所です。1993年から1994年にかけて取り壊され、現在では存在しない街となっています。

私は何の知識もなく、この作品を見たのですが、私がこの九龍城砦という建物の写真から感じたのは、無法地帯ゆえの怪しさというより、生きるパワーというか、人間の計り知れないエネルギー、目に見えない静かで巨大な力でした。

1900年代に刊行された写真集「九龍城砦」は現在では入手が困難ですが、近年、デジタルリマスター版の写真集が刊行されています。でももし機会があれば是非、展示に足を運んで、大きなサイズで作品を見て頂きたいです。写真の作品は実物を見た方が良いものと、写真集という形式で見ても良さがわかるものがありますが、この作品に関しては、オリジナルのプリントを見ることをおすすめします。

デジタルリマスター版の写真集については、手元にありますので、レッスン時にご覧になりたい方はおっしゃって頂ければと思います。

写真を学ぶには、大切なことがいくつかあり、そのうちの一つが良い作品をたくさん見ることです。素晴らしい作品に触れることが感性面でも大事なだけでなく、作品のバックグラウンドや、コンセプト、作品になるまでの過程、展示の際に見る人に伝えるための工夫や意図など勉強になることばかりです。写真集や写真展、絵画展や映画などを見ることをいつもおすすめしていますが、なかなか機会がない方もいらっしゃると思うので、希望される方には写真集をレッスン時にご覧頂けるようにしていこうかと思っています。見て頂ける写真集につきましては、今後ブログでご紹介していく予定です。

「建築×写真 - ここのみに在る光」は来年1月27日まで。美しいモノクロ写真で知られるイギリス人の風景写真家、マイケル・ケンナ写真展も同美術館で開催中です。